ミスタードーナツ
普段はあまりミスドへ行く機会はない。ではなぜ、休日の朝9時から最寄りの店舗へ張り切って歩いたか。
そう、それは季節限定の「さつまいもド」シリーズを買いに行くためだった。
"じゅわっと"した甘さが特徴で、「蜜いもド」という呼称に分類されるのが次の3つ。
・さつまいもド 焼き蜜いも風
・さつまいもド 蜜いもブリュレ
・さつまいもド 蜜いも
"ほくほく&しっとり"な食感がまるでさつまいものそれである、「ほくいもド」に分類されるのが次の2つ。
・さつまいもド 大学いも
・さつまいもド スイートポテト
これらを、売り切れる前に、1種類につき1個ずつ、買って家に持ち帰り、アイスコーヒーを牛乳で割ったやつと一緒にいただくのだ!!!
という意気込みだけでベッドから飛び起き、身支度もそこそこに家を飛び出したというわけである。
無事に最寄りの店舗に到着する。1人で飲み物とドーナツを傍におき、勉強や仕事をする客が多い。朝なので人は少ない。
どきどきしながらショーケースの前に立つ。ツヤっとした紫色のグレーズに覆われたドーナツ。見るからに「大学いも」な出立ちで、テカテカとこちらを誘惑するドーナツ。黄色いスイートポテトクリームがトッピングされたドーナツ・・・。季節限定のさつまいもド シリーズの輝きに心が躍る。
早る気持ちをなだめながら、愛しいそれらをひとつずつ、トングで端から掴んではトレーに乗せていく。
3つめにトングが掴んだのは、さつまいもド 大学いもだった。見るからにトロッとしたタレがなお光る。手前に倒れるそれをひとつ、トングで掴みかかったその時、すぐ隣の大学いもにトングが触れた。
大学いもはひとつひとつに小さく切り取られたビニールが当てられて、タレが余所につかないように工夫されている。が、そのビニールに保護されていない部分、生身の大学いもに触れてしまった。
タレがついたトングはそのままビニールをひっぺがした。いかん、これを買い取るしかない。他の大学いもに迷惑をかけぬよう慎重に、丸腰になった大学いもをトレーへ避難させる。
問題はこのトングだ。あと2つドーナツを回収しないといけないが、タレでもうベタベタだ。
交換しようと反対方向へなおり、順番待ちレーンを逆走する。方向転換した瞬間、おじさんとぶつかりそうになり、迷惑そうな顔をされる。
最初の位置に戻って、新しいトングを手に入れる。しかし自分が歩を進めたり、新しいトングをショーケースに向けてのばしたりするたび、トレーの上のタレまみれトングがバランスを崩して暴れる。何度も落としそうになり、ドーナツも落としそうになる。
そんなことをしている間に3人ほどにレジへの順番を追い抜かされた。
ようやくレジにトレーを置き、「すみません、そのドーナツのビニール剥がれてしまって・・・」と店員さんへ伝えた。
「大丈夫ですよ!」と言って、元気よくドーナツたちを袋に詰めてくれた。
いや、大丈夫じゃないんです。タレが他のドーナツについたら、他のドーナツたちが大丈夫じゃないんです!!!
思ったが、もちろん言わない。
袋に詰められたドーナツを受け取り、両手で大切に抱えて帰った。
私は本当に、この手の失敗が多い。ドーナツをトングで回収してレジで会計する。たったこれだけをなぜスムーズにこなせないのか。なぜあれほどどんくさいのか。
帰宅して、ドーナツを家族人数分に切り分ける。ひとりの取り分は小さくなってしまうが、私はこうした方が美味しいと思う。
全部食べ切る頃には、さきほどのしっぱいはもう忘れていた。